ソフトシェルクラブ。
日本語で簡単に言えば、脱皮したての殻の柔らかい蟹のことです。
脱皮したての蟹というと、日本では「身の入りが良くない商品価値の低いもの」と見なされています。
でも、アメリカでは、蟹の水揚げ量の約半分を占めるほど、商品価値の高いものなのです。
さて、ここからは、6月にアメリカのフロリダに行った時の事をお話ししましょう。
6月というのは、ちょうど蟹の脱皮のシーズンに当たります。
そうです、蟹は脱皮をする生き物なのです。
そんな蟹の仲間・ワタリ蟹の一種に、青蟹(ブルークラブ)という蟹がいます。
そして、この青蟹のソフトシェルクラブもまた美味なのです。
フロリダ湾の桟橋の近くでは、浅瀬まで蟹が寄ってきているのか、蟹をねらっている釣り人の姿をよく見ることができます。
また、海岸沿いの道路には、このような湾で獲れる豊富な魚介類を扱ってるレストランも多数あります。
レストランの中には自前の水槽を持っていて、脱皮間近の青蟹を(脱皮するまで)飼育しているところがあります。
そして、脱皮したてのタイミングでお客に料理として提供しているのです。
ところで、このソフトシェルクラブをまるごと1匹使った料理があります。
にんにく、塩、胡椒、片栗粉とから揚げ粉をまぶしてあげただけの唐揚げです。
今でも忘れられないカニ料理の一つです。
食感は驚くほど柔らかく、味わいは青蟹に特有の風味があるものの、殻ごと食べている感じが全くありません。
蟹のから揚げといえば日本ではサワガニの天ぷらぐらいしか食べたことがありませんでした。
だから、ほんとに、びっくりしたものです。
実は最近になって、アメリカで食べたあのソフトシェルクラブのから揚げが、日本のレストランでも食べられるようになった事を知りました。
まだ、扱っているお店こそ少ないものの、従来は商品価値が無かった蟹に、どうやら最近は大きな商品価値が付いたようなのです。
ところで、梅雨の頃になると、日本でも海岸近くにワタリ蟹が泳いでくることがあります。
そこで毎年、梅雨の時期になるとたも網を持って、夜の桟橋へ出かけることにしています。
平べったい蟹が海流に乗って泳いでくるのに出会えるからです。
上手く脱皮したての蟹がすくえれば、日本でもあの唐揚げを楽しむことができるのですが。
網ですくえる蟹は硬い甲羅のものばかりで、なかなかお目当ての蟹をすくうことができないのが残念です。
やはり、水槽で脱皮をするまで飼育しないと、そう簡単に丁度よいタイミングでいただくことはできないようです。
ところで、夜の桟橋では蟹以外にも獲物がゲットできることがあります。
私たちの食卓にお馴染みのイカがそうです。
イカも同じ時期に産卵のために海岸近くの藻場にやってくるので、うまくするとワタリ蟹とイカのダブルゲットが期待できるのです。
また、イカは必ず、つがいでやってくるので、1匹やってきたら近くに居るはずのもう1匹を探して、2匹をゲットすることができます。
もちろん、ワタリ蟹の味噌汁やイカの刺身も美味しいのですが…。
いつの日か、この日本で、脱皮したてのワタリ蟹をゲットして、あの唐揚げに挑戦してみたいと思っています。