そのガサガサと動くカニは私のハンモックが吊るされているヤシの木にどんどんと登っていきます。
暗がりで目を凝らしてみると、海から大量のカニが上がってきて、海辺に生えるヤシの木というヤシの木に次々に登って行っているのです。
初めての大量のカニにどうすることも出来ず、言葉を失って震えてしまいました。
するとどこからか現地の人がやって来ました。
手には槍とカゴ。
なんとその槍で器用にカニを突き刺して次々とカゴに捕まえていくではありませんか。
唖然とする私をよそにいとも簡単に捕まえられていくカニ。
現地の人は全て知っていたんですね、だからカニを食べようと私を誘い、私にハンモックの寝床を用意してくれたのです。
あとから聞くところによると、この満月の光を頼りにカニ達はヤシの実にあやかろうと海から出てくるのだそうです。
結局あまりの大量のカニの移動は明け方まで続き、恐怖にたいして眠れませんでした。
ハンモックで夜風に吹かれてはいたものの、あまり素敵とはいいがたい夜ではありましたが、翌日には大量のカニ三昧が待っていました!
その場で火をおこし、棒に突き刺したカニを火で焼いてむしゃぶりつきます。
さらには紐でいくつかまとめて縛られたカニを大きな鍋に入れて丸ごと茹でます。
あの恐怖の時間があってこそ?の大量の美味しいカニにありつけて大満足。
どこで食べたカニよりも美味しく、少し残っていても気にせず次々と身のある部分にしゃぶり付く贅沢さ。
手も口もカニだらけになれた至福の時でした。
今思えば、あんなにフレッシュな大量のカニを食べたのは後にも先にもあの時だけです。
(完)