僕が高校生の時、それまであまりかにを食べた事がなかったので、親にお願いして日帰りのバスツアーに参加する事になりました。
テレビでは連日のように、焼肉やかになどの特集がされていて、レポーターがいかにもおいしそうに食べているのを見て、カニはどんな味がして、どれほど美味しいものなのだろうと考えを巡らせていたものです。
その日帰りバスツアーに参加できるという事になり、僕は有頂天でその日を待っていました。
当日になり、予定としては最初に午前の間に移動と観光を少しして、お昼にかにの食べ放題、それが終わってから帰るという日程でした。
移動中、隣の席だったご夫婦と会話をしながら楽しみにかに食べ放題の時間を待っていたのを覚えています。
チラシに乗っているかにの画像がいかにも新鮮、美味しいです、と言わんばかりのものだったので、僕のかにに対する妄想はバスの中で絶頂だったと思います。
ある程度、観光も終わり、楽しみにしていたかにの食べ放題の時間になりました。
すると、かにの食べ放題の時間はわずか30分だけで、一応、殻が切られ食べやすくはなっているのですが、チラシのカニと違ってかなり小振りなものでした。
せっかくツアーに参加してまで来たわけですから、落ちていくテンションをなんとか鼓舞しながらかにの食べ放題が始まりました。
期待と希望に満ち溢れた僕のカニの食べ放題でしたが、口に入れたかには今考えると安物のかにだったのだと思います。かに通販で食べるヤツのほうがよほどおいしい。
ぱさぱさとしていて、カニの甘さもあまり感じられず、当時の僕の感想としてはかにかまを食べていた方がまだおいしい、というものでした。
なんだか腑に落ちず、しかし、せっかく参加したわけですから何本かカニを食べたのですが、短い制限時間が終わる前にもう食べるのをやめてしまいました。
期待の大きさに比例して、落胆も大きなものとなり、帰宅してから両親にその事を報告すると烈火の如く怒り、ツアー会社に電話していました。
それからしばらくして、なんとなくニュースを見ていると僕が利用したツアー会社がテレビで批判されていました。
批判された内容はカニの食べ放題があまりにも悪質、という事でした。
結局、僕が利用したかに食べ放題は詐欺まがいの悪質なもので、通常では考えられないほど劣化したかにを使っていたのだそうです。
かにの食べ放題に良い思い出が作れなかったのは、変な会社を使ってしまったからで通常のかにの食べ放題では、あんな事はほとんどないそうです。