「美味しいねえ」
「ほんとに美味しいねえ」
と言い合いながら、どんどんカニを食べてゆきました。
女二人でしたが、ものがカニとなると、食べる食べる。あっというまに、カニを平らげてしまいました。
すっかり満足してしまい、どてっと二人で座り込んでいると、懐かしい感じがしました。
そういえば昔もこんなことがあったなあと思い出したのです。
「ねえ、思い出してる?」
「ああ、やっぱりね」
友人とわたしは笑いあいました。
小学校時代のある日、わたしたち二人は、友人のおうちでカニをいただいたのです。
大人の席とは別に、子供だけの席を作ってもらいました。
カニの足が皿に盛られていました。
夢中で食べ、その間、二人とも無言でした。
食べ終わった時、なんとなくぐたっとしてしまい、座り込んでお互いの顔を見て、おかしくなってしまって笑いあいました。
「カニを食べる時って夢中よね。仕事してる時みたいよ」
そう言って友人は豪快に笑いました。
そこにいるのは、都会的でお洒落なキャリアウーマンではなく、カニにかぶりつく、無邪気な友人です。
「お仕事がすきなのね」
わたしが言うと、友人はうなずきました。
本当は、仕事が少しいやになっていたそうなのですが、今日、わたしに会い、カニを食べたら、なんだかやる気がわいてきたということです。
翌日、友人は帰ってしまいましたが、次来るときは、またカニを食べたいねと言い合い、約束をしました。
そんな友人は、すがすがしく、爽やかで、わたしも何かを頑張りたいなあ、なんて思いました。