記事内リンクには広告が含まれる場合があります。

カニを食べると…

ある年の瀬も迫った頃、私は会社の同僚たちと「エビ・カニ専門店」で忘年会をすることになりました。幼い頃から「エビ」と「カニ」を通販で買うくらいに目がない私は、その日をとても楽しみにしていました。
ですが、同じ兄妹でありながら私の兄は「甲殻類アレルギー」。
兄も「エビ・カニ」好きだったのですが、ある日突然、アレルギー症状に見舞われて、全く食べられなくなってしまったのです。ですから、「エビ・カニ」を食べる折には、私は「兄のようになりませんように…」と願いながら、兄の分まで味わって食べるようにしています。相変わらずかにを通販でも食べるくらいに大好きなんです。
幸いその忘年会では、参加者全員「エビ・カニ」の食べられない人はいなかったようで、みんな喜んでその席に集いました。
そして、宴が中盤に差し掛かった頃、私は隣の席の女の子の「殻入れ」に目がとまりました。よく見ると、「エビの殻」しか入っていないのです。彼女はほとんど「エビ」しか食べていないようでした。
不思議に思った私が、「どうしたの?カニは食べないの?」と尋ねると、「はい。私はカニは食べません。カニアレルギーなんです」という返事が…。
「???」
私の頭の中は、ますますクエスチョンマークでいっぱいになりました。
なぜかというと、もし「甲殻類アレルギー」なら、普通は「エビ」の方が「カニ」よりも発症率が高いので、「カニは食べても、エビは食べない」という方が自然なはず、その逆はないのでは?と思ったからです。
疑問に思った私は、もう一度「本当に、アレルギー?」と訊き返しました。
すると、彼女はケラケラ笑いながら「ええ。うちのおバカな母親のせいで…」と言うのです。
聞いてみると、家計のやりくりに長けていた彼女のお母様は、高級品のカニを子どもが食べたがらないように、「カニ」を食べたがる場面に出くわす度に、そっと彼女の耳元で
「あのね、誰にも言っちゃダメよ。カニを食べるとね、女の子にもヒゲが生えるのよ…」と囁いたのだそうです。
幼心にその言葉は鮮烈で、それ以来、彼女は真実がわかっても「カニ」を食べられないのだそう…
もうその話で、忘年会の席は爆笑の渦。
なんとユニークなお母様!
世の中には、子育てが思うようにいかず、悩んでいる方もたくさんいるというのに、なんと頼もしい!まるで、あの映画「ライフ イズ ビューティフル」の「世界で一番 あったかい嘘」を想い起こさせます。
ちなみに他には、「コーヒー牛乳を飲むと、色黒になる」とも言われていたそう。そう言って、子どもたちの健康を守っていたのでしょうね。
彼女のお母様、もしかしてそのうち「平成のがばい母ちゃん」として、全国行脚するんじゃないかしら?と、思わず予感。
日本にはまだまだ、たくさんすごい人がいるものです。

コメントは受け付けていません。