私の祖母はカニが大好きです。これが食べたいあれが食べたいなど、滅多に自分の希望を言うことのない謙虚な祖母が、唯一食べたいと言うのがカニです。
本当に目の色が変わるというか、美味しそうにハサミの先から甲羅の隅々までしゃぶってキレイに平らげます。三杯くらいはかるく食べてしまうんです。
小学生の頃、私もカニは大好きでしたが子どもながらに「おばあちゃんにはカニを沢山食べさせてあげたい」と思うほどの食べっぷりでした。
ある日、そんな祖母が脳梗塞で倒れてしましまったんです。入院した祖母の様態は芳しくなく、やっと目を覚ました時には自分の息子や孫達のことを分からなくなっていました。
私の名前さえ呼んでもらえないことが悲しくて、お見舞いに行くのがとても辛かったです。
生活が一変してしまった祖母ですが、こんな状況でも祖母はカニが好きなのかしら?と細心の注意を払って食べやすくしたカニ療養施設に持って行きました。
祖母はカニが大好きだったことは忘れてしまっている様子だったけど、本当に美味しそうに食べる祖母の姿を見て涙が出てきてしまいました。
やっぱり好きな食べ物は舌が覚えているのか、それとも好きな味は覚えていないけど、ただ喜んで食べただけなのか分かりません。
でも、美味しそうにカニを食べる祖母の姿は、亡くなって15年以上経った今でも忘れることはありませんね。
今では通販でかにを購入することもあります。
便利な世の中になりました。