私の父は無類のカニ好きです。
カニとついていれば何でも良いのではと思うほどですが、どちらかと言うと調理されているものよりは純粋にカニだけを味わえる生に近いもの、カニちらしやカニ鍋、お寿司や茹でたカニをより好んでいる様です。なのでかに通販も常連です。
何処でどう情報を得て来るのかは分かりませんがカニに関してだけは抜かりない父です。
以前、何処かのデパートで北海道名産フェアというのをやっており、そこでカニのお弁当が売られているから買って来て欲しいと頼まれた時は本当にビックリしたものです。
実は今までもそういうことは何度も合ったのですが、いつも母が父の為に買いに行っていた為私や妹は気付かなかったのです。初めてのおつかいを頼まれた時は母の都合が付かず、私にお鉢が回って来たのでした。その時改めて父のカニへの執着ぶり再確認した私です。
我が家ではカニのお弁当やら、何処かで買って来たようなちらし寿司、インターネット通販で取り寄せられたカニが食事に出される事が結構ありました。今思えばそれらは全て父の仕業だったのです。
そう考えると父のカニ好きは筋金入りだとシミジミ思う私です。
そんな父ですが、カニが好きだからといって独り占めすると言う様な事は決してありません。
カニが美味しいと評判のレストランを見つければ私達全員を連れて行ってくれますし、お弁当等も必ず家族の人数分買って来るよう言われます。
幸い父ほどではないですが、我が家は皆、カニが好きなので多少父のカニ好きに振り回される事があるものの問題は全くありません。
今でも父からおつかいのお願いはたまにあります。基本的には母が引き受けますが、母の都合が悪い時は私もしくは妹がそのお願いを引き継ぎます。
そんなカニ好きの父ですが、その父にとって最大の弱点もまた大好きな「カニ」なのです。
以前、母が某ブランドの時計が欲しいと父にお強請りした事があります。お目当ての時計を買う1週間前に他のブランドのバックを買っていた事もあり母は父に反対されてしまいました。
けれど、そこで諦めなかったのが母です。
何やら限定品だったらしくどうしても欲しかった母は1週間食卓にカニを並べ、父のご機嫌を取りながら根気強くお強請りしました。
その結果どうでしょう?
母の粘り勝ちです。
母は見事お目当ての時計を手に入れたのです。
そんな現場を間近で見ていた私と妹がそれを見習わないわけがありません。
父も自分のカニ好きが利用されていると分かっているのでしょうがカニの誘惑には抗えない様で最終的にはおれてしまうのです。
欲しいものやお願いがある時は必ずと言っていいほどカニが登場する我が家。
その効果は父にのみ有効ですが、願いが叶う確率は限りなく100パーセントに近いのです。
我が家で絶大な力を持つのは父でも母でもなく「カニ」です。