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長崎のかに

 私は生まれも育ちも長崎。長崎市のながさきっ子。
ここ長崎では、「呑んだらかにや」という台詞がよく聞かれます。そう、長崎で「カニと言えば…」とつぶやいたなら、必ず連れて行かれるお店があるんです。
それは、あの道頓堀の「カニ道楽」みたいな動くオブジェがお迎えするような派手なお店ではなく、しかも、お品書きにも「カニ」を使ったメニューも見あたりません。
では、それは何屋?なのかというと、なんと「おにぎり屋」さん。おにぎり専門店の「かにや」なのです。
創業は昭和40年だそうですから、もうザッと半世紀近い年月、変わらぬ「おにぎり」の味を守り続けておらるお店です。お店は長崎一の繁華街「銅座」の一角に、ひっそりとたたずんで「かにや」ののぼりでお客様を迎えてくれます。
夕方、看板に明かりが灯ると、三角のごま塩のおにぎりを、赤いカニがはさみの間に掲げている姿が、陽が落ちていく長崎の町にぽっかりと浮かびあがってきて、かわいらしくてホッとします。
これって、長崎ならではのふるさとの風景の一コマかも知れません。銅座の町に灯りがひとつふたつ…増えていくと、「さあ、夜が始まるな」って感じがするんです。そういう場所柄のせいで「呑んだら『かにや』」という台詞が、長崎人の間に定着していったのでしょう。
これはきっと、よその土地の人からすると「呑んだらラーメン」とか「呑んだら屋台」みたいな台詞みたいなもですね。
店内では、お寿司屋さんのように、カウンター越しに手際よくおにぎりを握る職人さんの技を見ることができます。その手際の良さと言ったら、本当にすばらしい!いつ見ても目が釘付けになります。こんあふうには、とても家では握れませんから、やっぱり家の味とは違うわけです。
「おにぎり」というと、家庭の味、もしくは、今ならコンビニの味が一般的になりつつある気がしますが、やはり人の手で握った食べ物って心がありますよね。お腹だけでなく、心までぽかぽかするものです。
幼い頃、私は父に連れられてこの店の暖簾をくぐったのが初めてでした。「かにや」という名前が、子ども心には強く響くものがあり、何度も壁のお品書きを見ては「かにおにぎり」を探したものでした。
そして、大人になってからは、お吸い物メニューの中に「がねじる」(カニのお味噌汁)がないものかと、これまた、わかっていても探すんですよね。人間の習性というか、「かにや」という名前の持つ力のすごさなのかも知れないと思います。
聞くところによると、「かにや」という名前の由来は日本昔話の「さるかに合戦」からとったらしいです。けれども、すぐにストーリーを思い浮かべられなくても、なぜか「かにや」という名前と日本の味「おにぎり」が切っても切れない関係にあるのは、細胞レベルでわかる気がするのは不思議です。
長崎のカニは「おにぎり」…
もし長崎に遊びにいらしたら、長崎の意外なカニを楽しんでみてください。

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