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カニ採りの想い出

私の住んでいる家の裏手には、潮水混じりの川が流れています。
その川にはしっかりとした護岸があって、川の淵には人工の岩場も設けられています。
そこには、様々な海と川の生き物が住んでいるのです。
私は小さい頃から、そこでよく遊んでいました。
岩場にはフジツボとカメノテがたくさんついていました。また、ぱっと水中を眺めただけでも、ハゼやテナガエビといった、小さな魚介類を発見することができました。
そこでの遊びで最も楽しかったのは、カニとりです。
カニといえば、今は通販くらいでしか食べることがないんですが、当時は沢蟹とかを天ぷらにしてよくいただいたものです。
護岸と護岸の間の細い隙間に、潮水が上がってきているところがありました。春になると、そこにはどういう訳かたくさんの小さなカニが入り込んできて、じっとしているのです。それが、毎年秋の始め頃まで続きました。
護岸の隙間にいるカニを取るのには、一膳の菜箸を使いました。
隙間の幅は二、三センチくらいで、そこに小さなカニが何匹も収まっています。左右に仲間が密着していない一匹を選んで、そのカニの左右から一本ずつ菜箸を、カニの下を通ってV字型になるまでそろそろと差し込んで行きます。
カニの下まで箸の先が到達したら、軽くクロスさせ、そのまま一気に上にはね上げます。
するとカニはひとたまりもなく、隙間の外に弾き出されるのです。
今度は隙間の外に出てきたカニを、必死で追いかけます。
頭のいいカニは溝に入ろうとするので、なんとか牽制します。
そうでないカニは、護岸のデコボコに収まって安心しきった様子になったり、石のしたに入って動かなくなったりするので、結構簡単に捕らえることができました。
再び溝に戻らないように牽制しながら、素早いカニをさっと捕まえるのです。
春から夏にかけては、そんな風にしてたくさんのカニを取るのが、何よりも楽しみでした。
カニとりには、たくさんの思い出があります。
近所の犬が逃げ惑うカニの匂いを嗅ごうとして、思い切り鼻を挟まれて悲鳴を上げていました。
また、捕ったカニのお腹に卵が一杯ついていた時は、すぐ逃がすようにしていたこともよく覚えています。
菜箸が隙間に落ちてしまった時は、他の人に箸を借りて、慎重に引き上げていました。失敗すると、非難轟々でした。
どういうわけか、巨大なワタリガニが隙間にぴったりと挟まっていて、みんなで協力して力任せに引き出したら、まだ生きていてびっくりしたこともありました。
このような体験の印象が強いので、私はカニと聞くとすぐに、隙間にはさまっていた小さなカニたちを思い出してしまいます。
大人になった今ではもうカニを取ることはありませんが、かに通販でかにのお世話には毎年なっています。

 

 

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