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母が用意したカニ鍋

去年のことです。
めったに連休のない主人が3連休だったので、奈良にある私の実家に帰ることになりました。
ここ名古屋から奈良までは、車で2時間くらいの距離なのですが。
それでも、なかなか実家に帰る機会がなかったので、うれしい気持ちでいっぱいでした。
そして、そのことを電話で伝えると、私の母が「今晩はお鍋にするから、はよ帰ってきいや。」と言ってくれたのです。
奈良は、海に面していないのでカニというのは、かなり手に入れにくい食材の1つなのです。
ですが、久しぶりに帰省する私と主人のために、カニを用意してくれるというのです。
そんなに気を遣わなくてもいいよ、とはいうものの。
そこはやっぱり母親なのでしょう。
「私も食べたいから。」と言って。私に気を遣わせないようにしてくれたのです。
いつまでも、私は母の子供なんだなと思いました。
もう、こんなにも年をとっているのに、ちょっと恥ずかしいような気持ちでした。
もちろん、実家がある場所(奈良)は北海道ではありませんから、捕れたてのカニは手に入りません。
帰省の当日、用意してくれていたのは、母の勤務している地元のスーパーマーケットの冷凍のカニでした。
でも、冷凍ものとはいえども立派なカニです。
いつものサンマやサバのような安価な食材とはワケが違います。
お財布の中に、追加で1万円札を入れておかないといけないというぐらいの買い物なのです。
母は、たまたまそこの鮮魚コーナーでパートをしているので、若干のサービス(値引き)はあったようなのですが。
それでも、高い買い物だったのだと予想はつきました。
その証拠に、スーパーで貰えるポイントが一気に貯まって、商品と交換してもらったと言っていました。
そんな風にして手に入れたカニですから、美味しさは一入(ひとしお)だったのです。
もともとカニが大好きな主人も大喜びでした。
私も母も、お腹がいっぱいなのに、それでもひたすらカニを食べ続けていました。
さらには、一緒に飲もうと用意しておいた缶ビールも、お腹が膨らむからという理由で飲むのを辞めたのです。
それくらい、カニをたくさん食べることに夢中だったのです。
確かに、産地直送の新鮮なカニに比べたら、味や鮮度は負けるのかもしれません。
でも、このカニを手に入れるために私たちの喜ぶ顔を思い浮かべてくれていた母の気持ちがあります。
また、少ないパートのお給料の中から私たちのために高価なカニを買ってくれたということ。
これはもう、本当に感謝しています。
あのカニ鍋の味は、きっとずっと忘れることはないでしょう。
それにしても、母の優しい気持ちに触れながらのあのカニ鍋は、私にとっては世界一のご馳走でした。
そして、このカニに負けないくらい、美味しい料理を母に食べてもらえるよう、これからも主婦業を頑張りたいと思いました。

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