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カニは例外

私の妹は高級志向です。
と言っても、何も服や鞄といったモノではなく食べ物についての話です。
スーパーの特売で買った様なお肉だと美味しくないと文句を言いますし、お刺身も養殖のものだと「今日のお刺身、天然じゃなくて養殖じゃない?」と言うほどです。
それでも家で出されたものは食べますが外食になると厄介です。
もちろん回っている寿司屋、回転寿しはお寿司でないと言って行きませんし、味が気に入らないと残してしまい食べないのです。
そもそもご令嬢とはほど遠く庶民の我が家なのにどうしてこれほど舌が肥えてしまったのか甚だ疑問に思う私です。
私には特売のお肉であろうと養殖のお刺身であろうとその違いはサッパリ分かりませんし、ましてやその違いを言い当てるなんて不可能です。どうして同じものを食べて同じ様に育って来たはずなのに私と妹はこうも違うのでしょうか?
というより、家族の中でどうして妹だけが突然変異の様に味覚に優れてしまったのでしょうか?
そんな迷惑な妹ですが何故か1つだけ例外があるのです。
それはカニです。
カニに限って言えば、妹は本物のカニよりも所謂「かにかま」と呼ばれる様な偽者の方が好きなのです。カニの身が入っているわけでもない魚肉のスリミから出来た「かに風味かまぼこ」やカニ風味とかかれている様なスリミの方が本物のカニよりも何倍もおいしいと言います。
おそらくカニの身そのものが彼女の口には合わないのだと思います。
それにお寿司屋さんに行ってもカニのお寿司だけは何も言わずに私の所によけますし、予めカニが入っていると分かるものは注文しません。
それでも頼んだものにカニが含まれていた場合は、大抵カニの部分だけが知らないうちに私の器に入れられています。
カニが好きな私としてはラッキー極まりなく、妹からカニをもらうためだけに態々お寿司屋さんでは妹の隣に陣取るほどです。
トロよりも大トロを好む様な妹がどうしてカニだけは偽物の方を好むのかは分かりませんが、出来れば他の食べ物にもこの傾向が現れてくれないものかと密かに願っている私達家族一同です。
私達が知る限り妹が本物よりも偽物の方を好むのは、今の所残念ながらカニだけなので私達の望みが叶えられる様な兆しはありません。
一方、何らかの機会で生のカニや妹の口に合うカニ料理に出くわし本物のカニに目覚めてしまったらどうしよう?と心配もしている私達です。
今の時点で既に外食は予定外の出費になってしまう事が殆どです。妹にこれ以上グルメになってもらっては我が家の家計は火の車でしょう。
姉としては確かに妹の味覚は特筆していると思いますし、その舌を活かした職業にでもついてはどうだろうか?と妹の将来に期待すらしています。
けれど私が働く様になるまで今暫くはもう少し家計に優しくなって欲しいと思う私です。

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